静岡市|障害者雇用は、スキルより環境と働く動機
※忙しい方のために、作業しながら聴けるよう、音声データを最下部に用意しています。ご活用ください。
「一生懸命トレーニングしているのに、なかなか就職が決まらない」 「就職しても、人間関係ですぐに辞めてしまう……」
障害福祉サービスを利用しながら一般就労を目指す中で、このような壁にぶつかる方は少なくありません。実は、支援の現場で議論される「就職できる人の共通点」は、単なるビジネスマナーやスキルの高さではないことがわかってきました。
今回は、障害者雇用において長く働き続けるために本当に必要な要素について解説します。
1. 「スキル」があれば就職できるという誤解
多くの就労支援の現場では、パソコン操作やマナー訓練が行われます。しかし、現実は「訓練をすれば劇的に変わる」というほど単純ではありません。
実は、就職できるかどうかの分かれ道は、スキル以前に「どうしても働かなければならない理由」が自分の中にあるかという点にあります。
• 「生活保護から脱却したい」
• 「自分でお金を稼ぐ必要がある」
• 「企業で働くことに明確な意義を感じている」
このような強い目的意識(危機感に近いもの)を持っている人は、環境の変化にも適応しやすく、継続して働き続ける力が強い傾向にあります。一方で、「働けたらいいな」という夢物語のような状態では、いざという時の粘りが弱くなってしまうのが現実です。
2. 退職理由の8割は「仕事内容」ではない
障害者雇用のデータによれば、退職理由のうち「仕事内容が合わなかった」というケースはわずか15〜20%程度に過ぎません。残りの大半は、人間関係や職場環境が原因です。
企業側も、障害者雇用において「高度な能力」を求めているケースは多くありません。
それよりも、以下のような「環境に適応する力」が重視されます。
• わからないことがあったら、自分から質問できる
• 相手を不快にする言葉を言わない、感情をコントロールする
• 未知の環境に飛び込み、そこに慣れようとする「タフな心(強靭な心)」
極論を言えば、計算能力や手先の器用さよりも、「人付き合いを適度にいなす力」や「その場の空気に馴染む力」こそが、就職を成功させる鍵となります。
3. 福祉の「心地よさ」から一歩踏み出す勇気
就労継続支援B型などの福祉サービスは、利用者にとって非常に守られた環境です。
• 厳しいノルマや営業がない
• 急な配置転換がない
• 送迎やお弁当があり、スタッフが悩みを聞いてくれる
この「手厚い環境」は大きな支えになりますが、一方で、そこから人間関係がゼロになる一般企業へ飛び出すことには大きな恐怖が伴います。
転職や新しい環境への不安は、誰にでもあるものです。それでも一歩を踏み出すためには、やはり自分の中に「外へ出る目的」をしっかり持つことが不可欠です。
まとめ:長く働き続けるためのマインドセット
就職活動において、面接練習やスキルアップは確かに大切です。しかし、それ以上に重要なのは、以下の3点です。
1. 「自分はなぜ働くのか」という目的を見直す
2. 完璧を目指すより、周囲に「聞く」ことで環境に馴染む
3. 感情のままに動かず、人との距離感を保つ術を覚える
スキルは後から身につけることができますが、「環境に適応しようとする姿勢」こそが、あなたの就職を後押しする最大の武器になるはずです。
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(例え話:就職は「新しい街への引越し」) 就職を成功させることは、言葉も習慣も少し違う「知らない街」へ引っ越すようなものです。その街で暮らしていくために大切なのは、立派な家具(スキル)を持っていることよりも、「その街で暮らしたい理由」が明確であることと、隣人に「わからないので教えてください」と挨拶できる素直さなのです。そうすれば、たとえ最初は不安でも、少しずつその街の住人になっていくことができます。

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