就労継続支援B型事業所の工賃100円は「搾取」なのか?
※この記事は、2024/7/19「就労継続支援B型事業所の工賃100円は労働力の搾取か」記事に加筆・修正を加えたものです。
最近、SNSやニュースで「障害者が時給100円で働かされている!これは労働力の搾取だ!」というような記事やコメントを見かけることが増えました。最低賃金が1000円を超えるこのご時世に、たしかに「時給100円」と聞くと、「え、安すぎる…」と感じる方も多いと思います。
でも、この問題、実は一筋縄ではいかないんです。
「搾取だ!」という意見もあれば、「いや、そうじゃない」という意見もあります。今回は、このモヤモヤする疑問について、私なりの考えをお話しさせてください。
まず、就労継続支援B型って何?
「就労継続支援B型(B型)」は、一言でいうと「一般企業で働くことが難しい人たちに、働く場所と機会を提供する福祉サービス」です。
ここで大切なのは、「雇用契約ではない」ということです。
私たちは、会社で働くとき、会社と「雇用契約」を結びますよね。この契約では、「1時間あたり最低〇円の賃金を支払いますよ」という最低賃金が保証されています。
でも、B型事業所は違います。
B型事業所は、「生産活動」という形で利用者さんが作業を行い、その成果物から得られた売上を、必要経費を引いた後に「工賃」として支払います。これは、労働の対価というよりも、「訓練への参加や作業の成果に対して支払われるもの」という側面が強いんです。
だから、工賃は利用者の生産性や事業所の売上によって変動します。厚生労働省のデータを見ても、全国平均工賃は時給233円(令和4年度)と、最低賃金よりかなり低いのが現状です。
それでも「搾取」と考えるのはなぜ?
利用者さんの中には、「時給100円でも、働く場所があるだけありがたい」と感じる方もいれば、「最低賃金と同じくらい頑張って働いているのに、なぜこんなに安いの?」と疑問に思う方もいるでしょう。
このギャップが、「搾取だ!」という声につながっているのだと思います。
もちろん、中には利用者のことを考えず、低い工賃で事業所の利益を優先しているような悪質な事業所も残念ながら存在するかもしれません。そういった事業所は、まさに「搾取」と言われても仕方ないでしょう。
しかし、多くのB型事業所は、工賃だけでは事業所を運営できません。職員の人件費や施設の維持費など、工賃以外の費用は、国からの「訓練等給付費」で賄われています。
つまり、B型事業所は、「働く場所」と「訓練」という福祉サービスを提供し、その一環として工賃を支払っていると捉えるのが、制度の趣旨としては正しいのです。

自分が選べる「選択肢」を知ろう
「時給100円で働くのは納得いかない!」
もしあなたがそう思うなら、それは決して間違った感情ではありません。
そして、その上で、ぜひ「他の選択肢」を考えてみてください。
B型事業所は、あくまで数ある福祉サービスの一つです。
- もっと高い工賃や給料を求めているなら…
- 就労継続支援A型:事業所と雇用契約を結ぶため、最低賃金が保証されます。
- 一般就労:一般企業に就職し、給料を得て働きます。
- 一般就労に向けてスキルアップしたいなら…
- 就労移行支援:一般就労を目指すための訓練やサポートを無料で受けられます。
どのサービスが自分に合っているのかは、一人ひとり違います。
「自分にはどんな仕事ができるだろう?」 「どんな働き方をしたいだろう?」

まずは、自分の能力や目標を客観的に見つめ直すことが大切です。そして、その上で、ご自身に合ったサービスや事業所を”自分で選ぶ”ことができます。
もし、今の状況にモヤモヤしたり、どうしたらいいかわからなくなったりしたら、ぜひ一度、お住まいの地域の相談支援事業所(市町村にある障害者支援課で事業者を教えてもらえます)に相談してみてください。
「搾取だ!」と声を上げることも大切ですが、その前に、「自分にとってのベストな働き方」を見つけるための第一歩を踏み出してみませんか?
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