【福祉を利用すべきでない人はいる】福祉サービス利用に「資格」は必要?~集団生活と利用者に求められること~

「福祉」と聞くと、どんな人も温かく受け入れてくれる場所、というイメージを持つかもしれません。しかし、実は障害福祉サービス、特に日中活動系の通所サービスを利用するにあたっては、私たちが思っている以上に、利用する側にも求められる「資格」や「準備」がある、というお話です。

サービスの現場は「集団活動」の場

 就労継続支援B型事業所(B型)のように、多くの人が利用する日中活動系の通所サービスは、基本的に集団活動の場です。だからこそ、利用者さん一人ひとりの行動が、他の利用者さんや支援員に大きな影響を与えます。
例えば、怒りっぽい人、情緒が不安定な人、暴力行為や威嚇をしてしまう人は、利用を遠慮してもらいたいというのが本音です。 なぜなら、トラブルが一度でも起きると、他の利用者さん(多くはメンタルが弱い方々です)が精神的に参ってしまうからです。
一度のトラブルでも、その事業所全体に長く深く影響が残ることがあります。

「ハラスメント」は福祉の現場でもやっぱりハラスメント

 支援員も人間です。利用者さんから暴言を吐かれたり、殴られたりすることは、精神的に大きな負担になります。普通のお店や会社であれば、顧客からの威嚇や大声は「カスタマーハラスメント(カスハラ)」や「パワーハラスメント」として明確に認識され、出入り禁止などの対応が取られるのが一般的です。

 ところが福祉の現場では、「福祉だから他の人が受け入れられない状態の人を受け入れるのが当たり前だ」という思い込みがどこかにある、と指摘されています。しかし、支援員も利用者さんと同じ人間であり、「嫌なものは嫌」なのです。障害を理由にハラスメント行為が許されるわけではないのです。

利用に求められる「準備」とは?

 では、具体的に利用者にどんなことが求められるのでしょうか?

1. 集団生活への適応能力

    できる限り良好に他者と過ごせる方のほうが、利用に適していると考えられます。
利用者さんも、支援員と同じように「モラルや倫理観」が必要です。職員に対してモラルを守れなかったり、倫理観を認識できなかったりする状態では、まだ他者と関わるには早すぎると考えられています。
威嚇したり、大声を出したりする行為は、迷惑行為でありハラスメントです。一般社会では一発退場になるような行為は、福祉の現場でも許されるべきではありません。

2. 感情コントロールと生活リズムの安定

    もし、程度にもよりますが障害の特性で感情のコントロールが難しいのであれば、まずは通所系のサービスではなく、もっと別の方法で改善に取り組むべきだ、と考えます。
例えば、感情のコントロールの訓練の場としてB型事業を利用することは、支援者が感情のサンドバッグになることを意味します。多くの支援者が暴言や暴力の恐怖に晒されており、それは決して良い状態ではありません。
B型の本来の目的は、乱れた生活リズムを整えることに重点があり、”感情の治療やコントロール”は病院で行うべきです。薬で安定してきて初めてリハビリ的に通所を検討する余地が出てくる、という考え方です。

3. 自己認識と他者への配慮

   自分の何気ない一言が、相手にとって鋭いナイフのようになっていないか、威嚇行為になっていないか、今一度自分自身に問いかけることが重要です。
もし少しでも「黄色信号」がつくようなら、まだ福祉サービスの利用は早いかもしれません。
 他者と関わるには、相手に受け入れられ、助けてもらう必要があるため、倫理観と配慮が不可欠です。この配慮や倫理観が欠如していると、他者と関わることは明白に困難です。

まとめ:「配慮しろ」の一方通行では成り立たない

 「福祉だから我慢や配慮するのが仕事だろう」という意見は確かにありますが、支援者も人間であり、暴言や暴力に耐えるのは健全な関係ではありません。ご利用者もまた、お客様であると同時に、社会の一員として他者へのモラルや倫理観、そして配慮が求められるのです。

 集団生活ができない、あるいは他者を威嚇するような行動しかできないのであれば、福祉サービスを利用することは時期尚早です。まずは医療機関で適切な治療や訓練を受け、集団生活がこなせる状態になってから、通所系のサービスの利用を検討するべきでしょう。

 福祉サービスは、ご利用者の「感情のサンドバッグ」ではありません。利用者、支援者、そして他の利用者さん、皆が安心して過ごせる場であるために、利用者さんにも一定のスキルと配慮が求められる、ということを心に留めておく必要があるのです。

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